31 | 瓦屋つぢのぼて 真南向かて見れば 島の浦ど見ゆる 里や見らぬ |
カラヤツィジヌブティ マフェンカティミリバ シマヌラドゥミユル サトゥヤミラン | |
読人知らず | |
@瓦屋の小高い丘の頂に登って南の方を見ると、島の浦が見えるだけで、いとしい人の姿は見えない。 | |
@この歌は、朝鮮の陶工の妻にまつわる悲恋物語を背景に考えられてきたが、独立した歌として理解してもよい。A朝鮮人の陶工とは,張献功,和名を仲地麗伸といわれている。豊臣秀吉の二度にわたる朝鮮出兵に参加した諸大名が競って陶工を連れ帰り,藩内の陶業を興したことはよく知られているが,張献功もそうした陶工の一人であった。彼は1617年,尚寧王に招かれ,一官,三官の二人と一緒に薩摩から沖縄にやってきて陶器の製造を伝えた。一官と三官の二人はまもなく帰ったが,張献功だけは沖縄に残り,那覇港の近くにあった湧田村に住んで,王府の命により御用品を製作するかたわら若者たちに壷の焼き方などの指導を続けていた。ある日,首里郊外を散歩していた張献功は,美しい女の人を見初め,ぜひわが妻にと王府に願い出た。調べたところ,その絶世の美女は人妻で子供までいることがわかった。そこであきらめるよう説得したが,張献功は頑として聞き入れず,「あの女を妻にできないのなら国に帰る」という始末。王府では,陶磁器や瓦の製法の技術を十分受けつぐまでは彼に居てもらわなくてはならず,そこで国のためにと彼女に因果を含め,夫や子供から引き離し張献功の妻にしたのである。女は国賓扱いの彼の下で不自由ない生活を送ったが,別れた夫や子供への思いは日に日に募るばかり,陶工の目を盗んでは丘に登り,故郷の夫を恋い慕ってうたったのがこの「瓦屋節」なのである。 | |
瓦屋節 | |
恋の歌 | |
有り | |
有り(RBC) | |
参考文献 |
@高校生のための古典副読本「沖縄の文学」沖縄県高等学校障害児学校教職員組合編A「沖縄文学碑めぐり」垣花武信・東江八十郎著 |